事前確定届出給与で社会保険を節約する方法

事前確定届出給与を適切に支給することによって社会保険の額を減らすことが可能となります。

事前確定届出給与とは会社が役員に対して、あらかじめ役員への賞与の額と支払時期を確定し、税務署に届出(提出期限あり)をして届出書の通りに支給する賞与のことです。あらかじめ賞与額を届出ているので利益操作の余地がないため、役員賞与でも損金算入が認められています。

社会保険料が削減できる理由

社会保険料は所得税や住民税と異なり上限があります。この上限がポイントとなります。

・標準報酬月額と標準賞与額
社会保険料は、通常は毎月支払われる給与(標準報酬月額)に基づいて計算されますが、事前確定届出給与は賞与として扱われ、標準賞与額という別の基準で計算されます。

・上限額の存在
健康保険と厚生年金保険では、それぞれ賞与にかかる社会保険料の上限額が定められています。上限額を超えた部分については、社会保険料は徴収されません。
社会保険の標準賞与額の上限は愛知県の令和6年の場合は健康保険が573万円、厚生年金保険が150万円となります。

都道府県毎の社会保険の料率表
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/

この社会保険の上限があることを活用して、役員の年収は変わりませんが、毎月の給与を抑えてその分を賞与として支給することにより社会保険料の削減をすることができます。

例えば年収が1,800万円の役員がいます。
同じ年収でも支給の形態により社会保険の負担額が次のように変化します。

  1. 毎月の役員報酬 100千円 役員賞与年1回 16,800千円 
    社会保険の本人と会社の負担の年額1,298千円
  2. 毎月の役員報酬 300千円 役員賞与年1回 14,400千円 
    社会保険の本人と会社の負担の年額2,023千円
  3. 毎月の役員報酬 1,500千円 役員賞与年1回 0千円 
    社会保険の本人と会社の負担の年額3,365千円

同じ年収1,800万円でも、
1と2では年間約725千円
1と3では年間約2,067千円社会保険負担額の節約ができます。

▼詳細は別紙ご参照ください。
役員報酬の支給方法による社会保険の負担の比較表

注意点は役員退職慰労金の損金算入限度額は一般的に最終月額給与×勤続年数×功績倍率で計算されますが、この最終月額給与には賞与は含まれないと解されています。役員退職金慰労金の支給を受ける予定がある方は毎月の役員報酬の金額を低くすると役員退職慰労金の損金算入限度額が少なくなってしまいますので、極端な事前確定届出給与の賞与を支給することは避けた方が良いです。