クラウド会計の選択について

お客様からよく「クラウド会計は何が良いの?たくさんあるけどどう違うの?」と質問があります。業務の効率化のためにはクラウド会計は必須と考えます。
税理士事務所としてはクラウド会計とZOOMやTeamsは時間と空間を超えて弊社の事務所から遠く離れているお客様をサポートできるとてもありがたいツールです。

本コラムでは、クラウド会計で最もシェアを占めている「マネーフォワード」と「freee」の両方を活用している弊社が、実践を通して感じた税理士事務所が感じている「マネーフォワード」と「freee」の違い、それぞれのクラウド会計ソフトの主要な特性と、どのような企業にフィットするのかを記載します。

弊社のスタンスですが、クラウド会計の選択はクライアントのご希望が最優先ですので、「マネーフォワード」と「freee」どちらのクラウド会計でも対応させていただいています。
私たちの率直な見解を交えながら、皆様のクラウド会計選びの一助となれば幸いです。
あくまで主観である点と私見である点ご容赦ください。

「誰が使うか」で最適解は変わると考えます

まずはインターネットの一般的な見解を記載します。

インターネットを検索しますと「freee」は簿記初心者向け、「マネーフォワードクラウド会計」はプロの経理担当者向けという見方が一般的なようです。 ただ、弊社がクライアントをサポートしていくなかで実践から感じることは次の通りです。

「マネーフォワード」と「freee」の比較と当事務所の見解

マネーフォワードクラウド会計は「社長や奥様、経理初心者」が使いやすい、おすすめと感じています

マネーフォワードの仕訳ベースの入力は直感的で理解しやすいです。経理の実務は昔の手書き帳簿から会計ソフトのコンピューター会計に移行してきた歴史があります。あまたのソフトメーカーが会計ソフトをリリースし、その歴史の風雪に耐え、累積淘汰を繰り返しながらユーザーに使いやすい会計ソフトというものが出来上がりました。

そのブラッシュアップされてきたいわゆる従来の会計ソフトの流れに沿って入力できるため、操作性が優れており、またシンプルな構造であるため直感的にも入力できスムーズに導入できると感じています。スマホのアプリを使うように取扱説明書がいらない。あまり必要ない帳簿組織と感じています。いわゆる従来のインストール型の会計ソフトがクラウド型になってインターネットバンクやクレジットカード情報のAPI連携(自動連携)ができて、さらに時短、さらに便利になったという印象です。

マネーフォワードの設計思想を弊社が勝手に解釈するには会計帳簿(総勘定元帳、試算表、決算書)にフォーカス(特化)をしてもっと簡単にもっと手間なく速く作成することを一番の目的にしていると感じています。

freee会計は「経理部長・プロの経理担当者」が使うのがおすすめと感じています

「バックオフィス業務全体の最適化を目指したい。」
「未来志向の新しい経理体制を構築したい。」

経理部長が、会計だけでなく請求書発行、経費精算、給与計算など、バックオフィス全体の業務プロセスを抜本的に効率化・自動化したいと考えている場合、freeeの統合型システムとしての強みが活かされます。個別の業務システム連携に起因する非効率を解消できます。

経理部長・プロの経理担当者など経理、総務、会計などを熟知している方にはとてもありがたいソフトです。目指すところは壮大といえます。

freeeの設計思想を弊社が勝手に解釈するには会計帳簿(総勘定元帳、試算表、決算書)だけではなく、経理総務業務全般にフォーカスをして効率的に行うことを一番の目的にしていると感じています。

freeeはバックオフィス業務全体を連携できる「総合業務システム」としての強みがあります。従業員が多ければ多いほどバックオフィス全体の業務は大量であり効果を発揮します。逆に従業員の人数が少ないとそもそもバックオフィス全体の業務はそこまで多くなく結果としてその効果は限定的です。

freeeは、中小企業だけでなく、IPO準備企業や上場企業、さらには様々な業種のニーズに応えるため、内部統制強化のための機能(承認フローの多段階化、詳細な権限設定など)や、より複雑な会計処理に対応する機能を数多く追加しています。総合業務システムであるがゆえに、これらの機能がメニューや設定画面の多さにつながりシンプルから複雑になります。他のクラウド会計であれば数クリックでできた設定や作業が、どこにあるか探すのに時間がかかったり、多くの選択肢の中から必要なものを選ぶなどの作業が必要になることがあります。経理部長・プロの経理担当者は良いのですが、経理初心者にとっては、情報量や連携箇所が多くてどこで操作をすれば良いか分からない、覚えることが多いと感じることがあります。

また、会計帳簿を締める、いわゆる試算表や決算書を作成するにあたり他の機能と連携統合されていると会計以外の業務の何かが滞るとそれが会計帳簿の完成に影響を与えて試算表や決算書を作成することに時間がかかってしまう。経営者が意思決定をするための数字の提供が遅れてしまう。ということも起きてしまいがちです。

中小企業の経理の実態

中小企業は大企業と違い経理職員の人員の数が少ないです。経理部長・プロの経理担当者などを間接部門の人員を雇用するよりも営業マンや技術者、職人、作業者などの直接収益を生む部門の採用が優先になります。そのため、経理は社長や奥様、経理初心者の方などが行い、経理レベルを上げるのは段階的になってしまうのは事業構造上仕方がない部分があります。そこを支援するのも税理士事務所の役割です。

また、経理職員の人数が少ない上に退職、産休育休などで数年に一度経理の引き継ぎということが行われます。

そのようなことを考えると会計ソフトの本来の目的は会計帳簿(総勘定元帳、試算表、決算書)を作成すること、中小企業の経理に従事する方は経理熟練者でないことを前提にシンプルさや引継ぎのしやすさというのが一番大切だと考えています。

自社で記帳することをおすすめします

余談ですが、複式簿記はイタリアで誕生し人類最高の発明の一つとまで言われています。そのため、仕組みとして洗練されています。会計ソフトに慣れると試算表や決算書が読めるようになり、今より数字を経営に活かせるようになります。数字がわからなければ、会計事務所と銀行と税務署の言いなりになってしまいます。

専門的には自計化というのですが、ぜひ自社で記帳できる体制を構築していただければと思います。その記帳コストはクラウド会計の誕生により劇的に少なくなりました。

まとめ

あくまで上記は全て私見であります。
「マネーフォワード」、「freee」とそれぞれに良さがあります。

皆様のクラウド会計の選択に一助の情報となれば幸いです。

名古屋市中区 笘原拓人税理士事務所 財務コンサルティングチーム